「そんなに威圧して、何がしたいの?」
私の名刺を見た方に、そう言われたことがあります。
私の名刺には、「USCMA(米国公認管理会計士)」という5文字を添えています。
誤解しないでほしいのですが、これは自慢したいわけでも、威圧したいわけでもありません。
日本ではまだあまりにも知名度が低いこの資格を、一人でも多くの人に知ってほしい。
そんな「草の根の布教活動」のつもりで記載しているだけなのです。
ですが、返ってきたのは「何それ?」という無関心か、あるいは先ほどのような「嫌味」に近い反応でした。
これが、日本におけるこの資格の現在地です。
この記事では、実際にUSCMAを取得し、20年以上にわたって現場で数字と向き合ってきた一人のUSCMAホルダーとして、「なぜUSCMAはやめとけと言われるのか」、そして「AI時代にこの資格が持つ真の価値」を、忖度なしにお話しします。
目次
USCMAは「やめとけ」と言われる3つの不都合な真実
知名度が低すぎて「説明コスト」が異常に高い
USCPA(米国公認会計士)や日商簿記であれば、名前を出すだけで「あぁ、あの資格ね」と能力を察してもらえます。しかし、USCMAは違います。
実際、私はこの資格が少しでも日本に広まればという思いで、名刺に「USCMA(米国公認管理会計士)」と記載しています。
ですが、交換した相手から「すごいですね」という反応をいただくことは、まずありません。
むしろ、返ってきたのはこんな言葉でした。 「なんだか、難しい資格を並べて威圧しているみたいだね」
自慢でも何でもなく、ただ「何だろう、この資格?」と興味を持ってもらうきっかけになればと思って載せているだけなのに、まさかの「嫌味」を言われる始末。
これが、日本におけるこの資格の現在地です。
履歴書に書いても、面接や社内評価の場で「これはどういう資格で、何ができるのか」を自分からプレゼンする必要がある。
「資格の名前だけで自動的に評価されたい」という人にとって、この説明コストの高さはただのストレスでしかありません。
受験料や継続コスト(年会費)という「維持費」の現実
USCMAは、試験に合格して「はい、おしまい」という資格ではありません。
むしろ、本当のコスト負担は合格してから始まると言っても過言ではありません。
まず、試験を受けるだけでも、入会金や受験料で相応のまとまった金額が飛んでいきます。
そして晴れてホルダーとなった後も、資格を維持するためにはIMA(米国管理会計士協会)への年会費を払い続けなければなりません。
さらに、資格継続のための継続学習(CPE)も義務付けられており、その受講にも時間と費用がかかります。
ここで忘れてはならないのが、これらの費用がすべて「ドル建て」であるという点です。
円安が進めば、自分の努力とは無関係に、日本円での支払額はどんどん膨らんでいきます。
このコストを「高い」「もったいない」と感じ、実務で使い倒して元を取る覚悟がない人にとって、USCMAは単なる「維持費のかかる負債」でしかありません。
「いつか役に立つかも」というフワッとした期待だけで、ドル建てのサブスクリプションを契約するようなものです。
そのコストを上回るベネフィットを自分のキャリアで勝ち取る自信がないなら、悪いことは言いません。
今のうちにやめておくのが賢明です。
「英語ができる」の証明にはならない
ネットで検索すると、よく「USCMA(特に英語受験)を取れば、英語力の証明になる」という評価を見かけます。
しかし、現実はそう甘くありません。(実際、2025年6月からは日本語での試験も開始されていますが、そうなれば「USCMA=英語力の証明」という図式はさらに崩れるでしょう。)
確かに、USCMAの学習を通じて英語力は確実に伸びます。
私自身、TOEIC 600点を取得した経験がありましたが、それでもテキストを開けば知らない単語で埋め尽くされていました。
しかし、学習を進める中で、「会計・経理の実務で使われる独特な英語表現」を体系的に身につけられるのは大きなメリットです。
ただし、ここで勘違いしてはいけないのが、「会計英語がわかること」と「英語でプレゼンができること」は全く別物だということです。
試験に合格したからといって、海外の拠点とバリバリ英語で交渉したり、経営層の前で英語のプレゼンをこなしたりできるようにはなりません。
USCMAはあくまで「管理会計の思考を英語で理解する」ためのものであり、汎用的なビジネス英会話ができる証明にはならないのです。
「英語力をアピールするためにUSCMAを取る」というのは、ある意味で正しく、ある意味で間違いです。
特定の分野の英語力はつきますが、本当の意味で「英語を使いこなす」ためには、また別で英語のトレーニングを積まなければなりません。
資格さえ取れば英語の問題がすべて解決すると期待しているなら、そのギャップに後悔することになるでしょう。

それでも私が、知人や同僚にUSCMAを勧める理由
ここまで「やめとけ」という不都合な真実を並べてきました。
しかし、もし友人や同僚から「これからの時代、どんなスキルを磨くべきか?」と本気で相談されたら、私は迷わず「USCMAで学べる管理会計の視点だ」と答えます。
なぜ、嫌味を言われてもなお、私はこの道を勧めるのか。
その理由は、AI時代に生き残るための「唯一の生存戦略」がここにあると確信しているからです。
AIは「正しい数字」を作るが、「どう使うか」は決められない
2026年現在、AIの進化によって簿記や仕訳、あるいはデータの整合性をチェックする監査業務の多くは自動化されつつあります。
過去の数字を正確に整理するだけの仕事は、残念ながらAIに取って代わられる「消えゆく仕事」です。
しかし、AIが吐き出した「正しい数字」をどう解釈し、会社の未来のためにどんな意思決定を下すか。
この「判断」の領域だけは、人間にしかできません。
USCMAで学ぶ管理会計やFP&Aの本質は、AIには代替不可能な「判断力」を養うことにあります。
実際にIMA(米国管理会計士協会)の調査では、CMA保持者の72%が、AI時代においてもこの資格が「雇用をより確実なものにする」と回答しています。
学習を通じて習得する「戦略的決断」「リスク管理」「データ分析」といった12のコア・コンピテンシーは、単なる知識ではありません。
それは、AIを高度な道具として使いこなし、組織を動かす「戦略的ビジネスパートナー」へと進化するための武器なのです。
作業者から「意思決定のパートナー」へ
経理の現場で20年以上過ごしてきたからこそ、痛感していることがあります。
それは、単なる「数字の集計係(Totalizer)」で終わるのか、それとも数字を武器に「経営の羅針盤(Management Compass)」になれるのか。
この差が、これからのキャリアにおいて決定的な生存境界線になるということです。
USCPA(米国公認会計士)のような、法律で守られた独占業務はUSCMAにはありません。
しかし、その分、USCMAは「実務でどう勝つか」という泥臭い意思決定に特化した資格です。
AIが進化する今、私たちはAIを「職を奪う脅威」として恐れる必要はありません。
むしろ、AIが生成した精緻な数字を「最高の材料」として使いこなし、経営者の背中を押す。
そんなFP&A(ファイナンシャル・プランニング&アナリシス)の能力こそが、これからの時代に最も求められる価値なのです。
実際に、この「戦略的パートナー」への進化には明確なリターンが伴います。
- 経済的な裏付け: 世界平均でCMA保持者は非保持者より21%高い報酬を得ており、特に変化の激しいアジア太平洋地域においても、その戦略的洞察力は高く評価されています。
- リーダーシップへの道: 組織内で単なる作業者ではなく、CFO(最高財務責任者)やコントローラーといった経営の中枢を担う「真のパートナー」として認知されるようになります。
作業をAIに任せ、人間は「判断」に集中する。このシフトを成し遂げたとき、名刺に刻んだUSCMAの文字は、もはや「嫌味」ではなく、あなたが「組織の未来を担うリーダー」であることの証明に変わるはずです。
他人の評価ではなく、自分の中に「思考の軸」ができる
名刺に書いて「威圧的だ」と嫌味を言われようが、知名度が低くて「何それ?」とスルーされようが、実はそんなことは些細な問題です。
USCMAの学習を通じて得られる真の価値は、誰にも奪われることのない「思考の軸」を自分の中に作れることにあります。
USCMAを保持することでもたらされる変化は、IMAのデータからも明らかです。
- 揺るぎない専門家としての自信: CMA保持者の83%が、資格取得によって「仕事に対する自信が高まった」と回答しています。
- グローバルな共通言語の習得: 世界150カ国以上で認められているこの資格は、国境を越えて通用する高度な会計・財務管理の知識を証明します。
- 戦略的インサイトの提供: 単なる数字の羅列から、組織をリードするための戦略的な洞察(インサイト)を引き出す力が身につきます。
AIが瞬時に予測値を弾き出す時代だからこそ、その数字を鵜呑みにせず、「経営戦略に照らして本当に正しいのか?」「倫理的なリスクはないか?」と、自分自身の軸で問い直す力が求められています。
たとえ周囲が資格の名前を知らなくても、あなたの発言の「質」が変われば、周囲の反応は自ずと変わります。
知名度という「他人の評価」に頼るのではなく、自分の中に「経営視点の判断基準」を持つこと。
それこそが、AI時代を生き抜くビジネスパーソンにとっての真の誇りになるはずです。
結論:あなたは「知名度」が欲しいのか、それとも「生き残る力」が欲しいのか
USCMAは、決して万人向けの「キラキラした魔法の杖」ではありません。
知名度は低く、維持費は高く、説明の手間もかかる。
まさに「やめとけ」と言われる要素が詰まった資格です。
しかし、「AIに代替される作業」を脱ぎ捨て、自らの判断で組織を動かす「FP&A」のプロを目指したいと願う人にとっては、これほど本質的で、長く効く武器は他にありません。
この記事を読んで「自分には合わない」と思えたなら、それは正しい判断です。
逆に、「知名度の壁なんて関係ない。AIにできない判断する力が欲しい」と、自分の可能性に静かな高揚感を感じたのなら、あなたはUSCMAに挑む資格があります。
知名度の低さや嫌味なんて、笑い飛ばしてやりましょう。
その先には、AI時代でも決して揺らぐことのない「本物の実力」が待っています。


