USCMA(米国公認管理会計士)は、米国ではUSCPAと並ぶ二大会計資格の一つです。企業の経営に関わる幅広い知識を習得し、主にコンサルティングや企業内の経営企画部門などで活躍できます。
また、英語力と高度な会計知識が求められ、取得することで国際的なビジネスパーソンとしてのキャリアアップが期待される資格です。
しかし、USCMAをGoogleで検索すると、「USCMA 意味ない」という検索ワードが関連性の高い検索として、上位に表示されることが多いです。
みなさんも、「USCMA 意味ない」というワードを目にしたことがあるのではないでしょうか。
本記事では、なぜUSCMAを取得しても意味がないと言われるのか、その疑問に答えるとともに、USCMAの真の価値について掘り下げていきます。
なぜUSCMAを取得しても意味がないと言われるのか?
USCMAを取得しても「意味がない」と言われる理由としては、主に以下の点が挙げられます。
1. 日本での知名度が低い:
USCPAに比べると、日本国内でのUSCMAの認知度はまだ低く、企業によっては資格の価値を十分に理解していない場合があります。
2. 独占業務がない:
公認会計士や税理士のように、USCMAが独占できる業務は特にありません。そのため、キャリアアップに直結するとは限らないという見方もできます。
3. 費用対効果:
USCMAの取得には、受験費用や教材費など、それなりのコストがかかります。その費用対効果を疑問視する声も聞かれます。特に、中小企業などでは、USCMAの資格手当が出ない場合もあり、費用回収に時間がかかる可能性があります。
USCMA取得に否定的な意見に対する反論
USCMA取得に対する否定的な意見は、様々な角度から出てきます。しかし、それらの意見に対しては、以下のような反論が考えられます。
1. 国際的な資格の認知度と信頼性:
USCMAは国際的に認知された資格であり、日本国内でもその価値が高まっています。この資格を持つことで、国際的なスキルや標準に対する理解を証明し、グローバルなキャリアにおいて競争力を得ることができます。
2. 経営管理の専門性向上:
USCMAは経営管理の分野での高度な専門知識を提供します。日本のビジネス環境においても、会計や経済の専門性を強化することで、経営者や管理職としてのキャリアパスが拡がり、職務の向上が期待できます。
3. グローバルな職場での適用可能性:
USCMAは国際的なビジネススキルを育むため、日本企業がグローバルな市場で展開する際に有益です。異文化コミュニケーションや国際的な会計慣行に対する理解が求められる状況で、USCMA取得者はその適用可能性を発揮できます。
結局のところどうなの?
これまで見てきたようにUSCMA取得のメリットは国際的な認知や専門性向上、グローバルな職場での適用可能性にありますが、同時に日本国内の資格との違いや受験費用、需要の制約などデメリットがあるところで、そのデメリットがより強調されて、「USCMA 意味ない」という誤解が生まれたのではないでしょうか。
結局のところ、取得しても意味がないといわれるのは、個人的には、日本での認知度が低いことが一番の理由だと考えています。
次の章からは、USCMAを取得するためにどのような学習をする必要があるかというところを観点に、USCMA取得することにより身に着く能力について掘り下げていきます。
IMA Management Competency Frameworkの適用
USCMA試験を主催するIMAは、管理会計コンピテンシー・フレームワーク(IMA Management Accounting Competency Framework)を作成しています。
このフレームワークは、管理会計の専門的能力の領域内でのスキルの評価、キャリア開発およびタレント・マネジメントに関する指針です。
また、このフレームワークでは、単に会計的な知識だけでなく、戦略的思考、分析能力、コミュニケーション能力など、幅広いビジネススキルを要求します。
これは、現代のビジネス環境において、管理会計の専門家が単なる数字処理だけでなく、経営層と連携し、戦略的な意思決定をサポートすることが求められていることを反映しています。
Domain | Skill |
1.戦略,計画立案および業績 (Strategy, Planning & Performance) | 事業戦略の策定や業績評価に関連するスキル |
2.報告とコントロール (Reporting & Control) | 会計情報の報告と内部統制に関連するスキル |
3.ビジネスの洞察力および 業務知識 (Business Acumen & Operations) | 事業理解と運営に関連するスキル |
4.テクノロジーおよびデータ分析法 (Technology & Analytics) | データ分析やテクノロジーの活用に関連するスキル |
5.リーダーシップ (Leadership) | チームマネジメントやリーダーシップに関連するスキル |
6.専門家にふさわしい倫理観と価値観 (Professional Ethics & Values) | 倫理的行動と価値観に関連するスキル |
USCMA試験は、上記のフレームワークに基づいて設計されております。
つまり、USCMA試験に合格するためには、このフレームワークで定義されている上記の6つのドメインに関する知識とスキルを習得する必要があります。
USCMA試験範囲
USCMA試験範囲は、管理会計の主要分野を包括的にカバーしています。
以下のビジネスにおける12のコアな実践分野を網羅した試験に合格する必要があります。
- 財務諸表報告の決定
- 予算の計画、編成
- 業績管理
- 原価管理
- 内部統制
- テクノロジーと分析
- 財務諸表の分析
- 企業財務
- 意思決定分析
- リスクマネジネント
- 投資意思決定
- 倫理
USCMA資格を学習することで身につく能力
USCMA資格は上記のとおり、管理会計の幅広い分野から出題されます。
USCMA資格を取得することで、幅広いビジネススキルを習得し、企業の財務戦略を立案・実行できるようになります。各項目について、具体的な能力とUSCMAの学習内容との関連性を解説します。
財務諸表報告の決定
- 能力: 正確な財務情報を収集・分析し、適切な会計基準に基づいて財務諸表を作成する能力。
- USCMAとの関連: 財務会計、管理会計の知識を深く学ぶことで、様々な会計基準(GAAP、IFRSなど)を理解し、複雑な会計処理に対応できるようになります。
キーワード
- GAAP (Generally Accepted Accounting Principles)
- IFRS (International Financial Reporting Standards)
- 収益認識:Revenue recognition
- 資産の測定:Measurement of assets
- 負債の測定:Measurement of liabilities
予算の計画、編成
- 能力: 企業の目標達成のために、予算を計画し、編成する能力。
- USCMAとの関連: 予算策定、原価計算、管理会計の知識を習得することで、事業計画に基づいた予算を作成し、費用対効果の高い投資を判断できるようになります。
キーワード
- 予算策定:Budgeting
- 原価計算:Cost accounting
- 変動費:Variable costs
- 固定費:Fixed costs
- 損益分岐点:Break-even point
業績管理
- 能力: 予算と実績を比較し、業績を評価し、改善策を提案する能力。
- USCMAとの関連: 経営管理会計、原価計算の知識を習得することで、KPIを設定し、業績を定量的に評価し、改善目標を設定できるようになります。
キーワード
- KPI (Key Performance Indicator)
- バランススコアカード:Balanced scorecard
- 差異分析:Variance analysis
- 品質管理:Quality control
- 生産性向上:Productivity improvement
原価管理
- 能力: 製品やサービスの原価を計算し、原価低減策を検討する能力。
- USCMAとの関連: 原価計算、管理会計の知識を習得することで、様々な原価計算方法を理解し、原価構造を分析し、原価低減の機会を特定できるようになります。
キーワード
- 直接費:Direct costs
- 間接費:Indirect cos
- 原価計算システム:Cost accounting system
- ABC分析:ABC analysis
- 目標原価計算:Target costing
内部統制
- 能力: 企業の内部統制システムを設計、実施、評価する能力。
- USCMAとの関連: 内部統制、リスク管理の知識を習得することで、SOX法などの規制に対応し、企業の信頼性を高めるための内部統制を構築できるようになります。
キーワード
- サーベンス・オクスリー法:SOX Act
- COSOフレームワーク:COSO framework
- リスク評価:Risk assessment
- コントロール活動:Control activities
- モニタリング:Monitoring
テクノロジーと分析
- 能力: データ分析ツールや会計ソフトウェアを活用し、経営判断に役立つ情報を抽出する能力。
- USCMAとの関連: データ分析、情報システムの知識を習得することで、大規模なデータを分析し、経営課題の解決に繋がる洞察を得ることができるようになります。
キーワード
- データマイニング:Data mining
- ビジネスインテリジェンス:Business intelligence
- 人工知能:AI
- 機械学習:Machine learning
- RPA:Robotic Process Automation
財務諸表の分析
- 能力: 財務諸表を読み解き、企業の財務状況を分析し、将来の業績を予測する能力。
- USCMAとの関連: 財務会計、財務管理の知識を習得することで、財務比率分析、キャッシュフロー分析など、様々な分析手法を用いて企業の財務状況を評価できるようになります。
キーワード
- 財務比率分析:Ratio analysis
- キャッシュフロー分析:Cash flow analysis
- トレンド分析:Trend analysis
- 損益計算書:Income statement
- 貸借対照表:Balance sheet
企業財務
- 能力: 資金調達、投資、配当などの財務戦略を立案し、実行する能力。
- USCMAとの関連: 企業財務、投資論の知識を習得することで、企業価値の最大化を目指した財務戦略を立案できるようになります。
キーワード
- 資金調達:Financing
- 投資:Investing
- 配当:Dividends
- 加重平均資本コスト:WACC (Weighted Average Cost of Capital)
- 現在価値:NPV (Net Present Value)
意思決定分析
- 能力: 不確実な状況下で、複数の選択肢の中から最適な意思決定を行う能力。
- USCMAとの関連: 意思決定論、リスク管理の知識を習得することで、意思決定に必要な情報を収集・分析し、最適な選択肢を選択できるようになります。
キーワード
- 意思決定木:Decision tree
- シミュレーション:Simulation
- 感度分析:Sensitivity analysis
- ベイズ統計:Bayesian statistics
- ゲーム理論:Game theory
リスクマネジネント
- 能力: 企業が直面する様々なリスクを特定し、評価し、対策を講じる能力。
- USCMAとの関連: リスク管理、内部統制の知識を習得することで、企業の持続的な成長のために、リスクを最小化し、機会を最大化できるようになります。
キーワード
- リスク識別:Risk identification
- リスク評価:Risk assessment
- リスク対応:Risk response
- リスク伝達:Risk transfer
- リスクモニタリング:Risk monitoring
投資意思決定
- 能力: 投資案件の評価を行い、投資意思決定を行う能力。
- USCMAとの関連: 投資論、財務分析の知識を習得することで、投資案件の収益性、リスクを評価し、最適な投資先を選択できるようになります。
キーワード
- 割引キャッシュフロー法:DCF method (Discounted Cash Flow)
- 内部収益率:IRR (Internal Rate of Return)
- 資本資産価格モデル:CAPM (Capital Asset Pricing Model)
- ポートフォリオ理論:Portfolio theory
- 合併・買収:M&A
倫理
- 能力: 会計のプロフェッショナルとしての倫理観を持ち、誠実に職務を遂行する能力。
- USCMAとの関連: 倫理に関する知識を習得することで、公正な判断を行い、社会全体の利益に貢献できるようになります。
キーワード
- 職業倫理:Professional ethics
- 客観性:Objectivity
- 正直:Integrity
- 秘密保持:Confidentiality
- 専門能力の維持:Due professional care
まとめ
USCMAを取得することには、多くのメリットとデメリットがあります。しかし、試験内容の素晴らしさから見て、USCMAを取得することは、自己成長の機会となり、グローバルなビジネスシーンで活躍するための基盤を築くことにつながることは間違いありません。
USCMAの取得を検討されている方は、この記事で紹介した情報を参考に、ご自身のキャリアプランと照らし合わせて判断してみてください。