FP&Aとは?必要なスキル・将来性などを解説

経理・財務系の職種の1つとして、最近、「FP&A」という職種をよく耳にするようになりました。

FP&Aとは、Financial Planning & Analysisの略で、企業の財務状況を分析し、経営戦略や意思決定を支援する職種や業務です。

欧米企業では、すでにFP&Aの導入が進んでいましたが、近年、日本企業においても、FP&Aの導入が進んでいます。例えば、ヤマハ発動機、NEC、資生堂などです。

急速なテクノロジーの進化、グローバル化など、ビジネス環境の変化に企業はスピード感をもって対応しなければなりません。その際に経営の羅針盤としてFP&Aが、会計・財務などの知識をバックグラウンドに、企業の課題解決に役立ち、競争力や収益性向上の源泉として機能します。


この記事では、いま注目されるFP&Aの役割や将来性、またFP&A部門で活躍していくために必要なスキルなどについて解説します。

目次

FP&Aとは何か

FP&Aとは

  • Financial Planning & Analysisの略で、企業の財務状況を分析し、経営戦略や意思決定を支援する職種や業務です。
  • CFO(最高財務責任者)の傘下にある重要な機能として、海外企業では一般的に認知されています。
  • 日本企業でも、コーポレートガバナンスの強化やグローバル化の進展に伴い、FP&A人材のニーズが高まっています
  • FP&Aには、財務や会計の深い知識だけでなく、ビジネスや市場の理解、コミュニケーションや問題解決のスキルなどが求められます。
  • FP&Aの主な仕事内容は、予算策定、予測、分析、レポーティングなどです。

不確実性の時代

現在の企業を取り巻く環境は、デジタルテクノロジーの発展により、新しい商品やビジネスモデルが生まれ、競争環境が激化しています。

また、新型コロナウイルスの流行により、人々の働き方や消費行動が大きく変化し、消費者ニーズの多様化が進んでいます。

さらに、米中対立やロシアのウクライナ侵攻などの地政学的なリスクにより、国際秩序や経済状況が不安定になっています。

すなわち、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性が高まり、将来の予測が困難な時代といえるでしょう。

このような時代において、企業はどのように経営を行うべきでしょうか。

なぜ、FP&Aに注目するのか

私は、FP&Aに注目しています。

なぜなら、FP&Aは、不確実性の時代において、企業経営にとって重要な役割を果たすと考えられるからです。その理由は、以下の3点にまとめられます。

  • FP&Aは、経営環境の変化に対応するために、柔軟な予算や予測の作成・修正を行うことができます。また、データの分析やシミュレーションを通じて、経営リスクや機会を早期に発見し、経営幹部に的確なアドバイスを提供します。
  • FP&Aは、事業部門の管理会計や予算実績管理など経営において重要なKPIの集計、分析、予測などを行い、意思決定を支援します。
  • FP&Aは、経営幹部や事業部門と密に連携し、経営方針や戦略に沿った計画の立案や実行をサポートすることができます。また、新製品やサービスの開発にも携わり、損益計算から投資の効果測定、会社全体の中長期戦略に与える影響まで検討します。

以上のように、FP&Aは、不確実性の時代において、経営の見通しを明確にし、経営判断を支え、経営変革を推進するための重要なパートナーとなると言えるのです。

FP&Aの将来性

日本企業においては、FP&Aの専門部門や職種がある企業は少なく、経理・財務部や経営企画部などの部門で、FP&Aに近い業務が行われているのが現状です。

つまり、日本企業では、各事業部門に独自に計数管理部門を持つため、全社的な視点で経営と管理会計とを結びつけて戦略の立案といった、ビジネスパートナーとして役割を十分に果たせている部門がないことを意味します。

このような現状にメスを入れたのが、ヤマハ発動機、NEC、資生堂などです。

例えば、NECでは、これまで経理のほか、事業計画という部署を置き、各部門の予算管理などを行ってきていました。しかし、これをFP&AとしてCFO傘下に組み込み、レポートラインを明確化にしました。さらに、財務データの分析を通じた事業戦略の提案などを行う役割を担うようにしました。

このように、日本企業においても、FP&Aの機能を強化し、経営管理のレベルを向上させ、今後の競争力や収益性向上の源泉としようとしており、FP&Aのニーズは高まっています

FP&Aに必要なスキル

FP&Aは、不確実性の時代において、企業経営にとって重要な役割を果たします。その役割を果たすためには高いスキルが必要とされる職種です。

  • 会計や財務の深い知識
  • ビジネスパートナーとしてのビジネス能力
  • コミュニケーションのスキル
  • ITスキル
  • 英語力

会計や財務に関する知識

企業の財務状況を正確に理解し、適切な戦略策定や意思決定を行うためには、会計や財務に関する深い知識が必要です。特に、財務会計と管理会計の両方に精通していることが望ましいです。

財務会計とは、企業の財務状態を外部に開示するための会計です。決算短信や有価証券報告書などがその例です。財務会計の知識は、企業の財務状況を客観的に評価し、投資家や債権者などのステークホルダーとのコミュニケーションに役立ちます。

一方で、管理会計とは、企業の経営を効果的に運営するための内部的な会計です。予算や予測、コスト管理や収益性分析などがその例です。管理会計の知識は、企業の経営状況を分析し、経営陣の意思決定を支援します。

財務や会計の知識を身につけるためには、簿記や会計学の勉強が必要です。また、財務分析のスキルも重要です。財務分析とは、財務諸表や経営指標などを使って、企業の財務状況や収益性や資本構造などを評価することです。

ビジネスパートナーとしてのビジネス能力

FP&Aには、経営陣のビジネスパートナーとして相応のビジネス能力が求められます。したがって、財務や会計の知識だけではなく、事業や組織、顧客、競合などに対する総合的な理解が必要です。

FP&Aは、財務や会計の専門家としてだけではなく、経営や事業の戦略立案や実行にも積極的に関与します。そのため、自社の事業や組織の特徴や強みや弱みを把握し、市場や顧客のニーズや動向を分析し、競合やパートナーの戦略や行動を予測することができる必要があります。

また、FP&Aは、経営陣だけでなく、投資家や債権者などステークホルダーの期待値を正確に把握し、適時適切なフィードバックを提供することも重要です。そのため、財務や会計の専門用語だけではなく、ビジネス用語や一般的な用語を使って、わかりやすく説明することができる必要があります。

コミュニケーションのスキル

FP&Aは、経営陣や事業部門など、さまざまな部署や役職の人と連携して業務を行います。そのため、信頼関係を築き、協力や情報共有を得ることができる人間関係の構築が必要です。

FP&Aは、分析したデータや策定した計画を経営陣やステークホルダーに提示し、理解してもらい、コンセンサスを得る必要があります。そのため、データや計画を分かりやすく伝えるプレゼンテーションスキルが必要です。また、質疑応答や議論にも対応できる論理的思考力や表現力も必要です。

FP&Aは、経営や事業の課題や問題に対して、分析や提案を行うことがあります。そのため、問題を明確に定義し、原因や解決策を探り、最適な選択肢を選ぶことができる問題解決能力が必要です。

ITスキル

FP&Aは、財務や会計のデータを効率的に分析し、その結果を経営陣やステークホルダーと共有するために、ITスキルを大いに活用します。

特に、WordやExcelなどの基本的なソフトウェアは、FP&Aの業務に欠かせないツールです。データの入力や集計、グラフや表の作成、文章や数式の記述など、さまざまな機能を自由自在に使えるようになる必要があります。

さらには、ビジネスに関するデータを分析し、可視化するためのソフトウェアであるBIツール(Business Intelligence)を使えるようになる必要があります。BIツールは、データベースから取得したデータを、グラフやダッシュボードなどに変換し、分かりやすく表示することができます。BIツールは、データの傾向や関係性を発見し、インサイトを得るために役立ちます。

英語力

語学は、英語以外にさまざまありますが、英語力はビジネスの世界においては、最も重要な語学力です。それは、FP&Aにとっても変わりません。英語力が必要な理由は、以下のようなものがあります。

外資系企業での採用が多い
海外の経営陣やステークホルダーとのコミュニケーションのため

外資系企業での採用が多いのは、日本企業ではFP&A部門の設置数が少ないためです。外資系企業では、FP&Aが経営戦略や財務計画の策定などに積極的に関与することが一般的です。そのため、外資系企業で働くFP&Aは、英語でのレポーティングやプレゼンテーション、質疑応答などができる必要があります。

海外の経営陣やステークホルダーとのコミュニケーションのためというのは、FP&Aが経営陣のビジネスパートナーとして機能するためです。FP&Aは、分析したデータや策定した計画を経営陣やステークホルダーに提示し、説得や合意形成を行うことがあります。その際に、英語でのコミュニケーションがスムーズにできることが必要です。

FP&Aに最適な資格とは

FP&Aにとして仕事をするためには、上記で説明したとおり、会計や財務だけでなく、ビジネスや戦略に関する幅広い知識やスキルが求められます。

FP&Aに最適な資格は、その人のキャリア戦略や目標によって異なりますが、一般的には以下のような資格が有用とされています。

  • USCPA(米国公認会計士)
  • USCMA(米国公認管理会計士)
  • FP&A(経営企画スキル検定)
  • MBA(経営学修士)

それぞれの資格について、簡単に説明します。

USCPA(米国公認会計士)

USCPAは、米国の公認会計士資格です。米国の会計基準や財務報告に関する深い知識を持ちます。資格を取得するには、英語・会計・IT・法律・ファイナンスについて学習する必要があるため、FP&Aには最適な資格と言えるでしょう。

USCMA(米国公認管理会計士)

USCMAは、日本では知名度は低いですが、米国ではUSCPA(米国公認会計士)とともに、会計分野の2大プロフェッショナルに数えられています。USCMAを取得するには、管理会計、ファイナンス、IT、データ分析、倫理など、実務に直結する12の分野を網羅した2つのパートで構成される試験に合格する必要があるため、FP&Aには最適な資格と言えます。

FP&A(経営企画スキル検定)

FP&A(経営企画スキル検定)は、経営企画や経営管理において重要なスキルを評価する資格です。この検定は、日本CFO協会が提供しているもので、米国AFP(Association for Financial Professionals)がグローバルに認定しているFP&Aのグローバル資格「FPAC」取得に向けた入門プログラムとして提供されています。

MBA(経営学修士)

MBAは、経営学の修士号です。戦略、マーケティング、組織論、経済学など、幅広いビジネス関連のトピックを網羅し、経営層とのレベル感のズレを感じなくなります。また、MBAプログラムでは、多様なバックグラウンドを持つ人とのネットワーキングやチームワークも学べます。

まとめ

  • FP&Aは、企業の財務状況を分析し、経営戦略や意思決定を支援する職種や業務です。
  • FP&Aの主な仕事内容は、予算策定、予測、分析、レポーティングなどです。
  • FP&Aは、日本企業でもその役割を担う組織が作られるなど、注目度が高まっている職種である。
  • FP&Aは、主に会計・財務、ビジネス、コミュニケーション、IT、英語力などのスキルが必要
  • FP&Aの役割を果たすために、USCPA、USCMA、FP&A検定、MBA等の資格の取得が有用
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